パリ・旅の雑学ノート

玉村豊男さんの「パリ・旅の雑学ノート」という本を読みました。1977年にダイヤモンド社から出版された本で、その後、文庫版が新潮文庫から1983年に発売され、一度廃刊になった後、2009年に中公文庫から復刊しました。僕が購入したのは中公文庫版。代官山 T-SITEで、旅のエッセイを集めたコーナーに並んでいたものを手に取りました。チェンマイへ行く途中の飛行機で、もしくは滞在先の hoshihana village で旅の本を読みたいと思って購入。チェンマイとパリ、全然関係ないんですけどね。

ある程度予想していたことではあるのですが、いざ旅に出ると、本を開くことすらできず、クリスマスを半ズボンで過ごすアジア・チェンマイで、木枯らしが吹くヨーロッパ・パリの本を読むというギャップを感じることはありませんでした。子連れの旅は、時間があるようで、のんびり読書をするタイミングは見当たりません。今回こそはと思いつつ、毎回何冊か本を携えていくんですけれど。

さて、「パリ・旅の雑学ノート」ですが、26歳から2年間パリに暮らした玉村さんの実感をもとに、パリ/フランスの歴史や文化を丁寧に調べて、客観的に詳細に書かれています。特に目新しい視点が提示されているわけではないのですが、そう感じるのは、出版から40年経った2017年に読んでいるからであって、きっと初版が出た1977年には、かなり斬新な語り口だったのではないかと想像します。

当時は、フランスに対して日本人が幻想にも近いあこがれを抱いていた時代。新潮文庫版の「パリ・旅の雑学ノート」に寄せられたフランソワーズ・モレシャンさんの解説がその様子を見事に言い当てています

今まで、フランス好きの日本人は、とてもご親切でありがたいことなのですが、当のフランス人が赤面するぐらいフランスを課題評価して、フランスの全てが知性とエレガンスに包まれているような紹介をしてくれました。

フランスを過大評価しない、冷静な玉村さんの視点は新鮮だったはず。

最初に書いた通り、パリ・旅の雑学ノートには3つのバージョンがあり、装丁が大きく異なります。一番新しい中公文庫版は玉村豊男さんご自身のイラストが表紙になっているので、最も玉村さんらしいと言えるのかもしれませんが、僕は2冊目の新潮文庫版が好き。

51h3iVNJcTL._SX452_BO1,204,203,200_.jpg
ダイアモンド社(1977年)
51ABqztRfbL.jpg
新潮文庫(1983年)
Shin Sasaki

デザイナー、D&DEPARTMENT HOKKAIDO のオーナー、一児の父。お酒は飲めません。学生時代にミニシアターで映写技師として働いていたので8mm、16mm、35mmの映写ができるのですが、その技術を活かす機会は20年で1度だけ。