アンネ・コールシュミット人形展

2017年5月10日 水曜日 11:00–19:00
会場:D&DEPARTMENT HOKKAIDO(札幌市中央区大通西17丁目1-7

アンネ・コールシュミットさんの人形展が札幌で開催されることになりました。アンネさん本人も来札します。人形展ってなかなか足を運ぶことないですけど、彼女の人形には個人的に特別な関心があり、今から楽しみにしています。仕事柄、一般的な基準よりは人形を眺める機会は多いですが、その中でも群を抜いて「暖かい眼差し」を持つ作品を作ることができる人形作家アンネさん。

人形は「子どもの心を映す鏡」という役割を担う場面が多いです。小さい人たちは、自らの様々な気持ちを人形に語らせて、気持ちを吐き出し、整理し、受け止めていく。しかも、遊びの中で。絵本でもそのようなテーマのものが山のようにあります。例えば、林明子さんの作品には、子どもの傍に人形を描くことが多い。『こんとあき』『いもうとのにゅういん』『おでかけのまえに』と思いつくだけでもけっこうあります。現実にも、そのような場面をよく見ることがあります。

「子どもの傍にある人形がどのような眼差しをもっているのか」

私の人形を「選ぶ基準」のひとつは、そこにあります。アンネさんの人形に感じる「暖かい眼差し」は、一体どうやって「彼女の手仕事=デザイン」から生み出されてくるのか。息子を見ても思いますが、妻の体の中から出てきたことを忘れるくらい細部に渡って、完璧にデザインされている。初めから世界にいたみたい。美しい。それに近い感覚をアンネさんの人形には感じてしまうから不思議。

私自身も彼女の人形を「これすごくいいでしょ」と紹介されて出会いました。いい年のおじさんでも話しかけてしまうくらい(アブナイ!!)の衝撃でした。そして、2016年の夏、アンネさん宅にお邪魔する機会もあり、生み出される現場を目の当たりにし、そこにある生活感に妙な納得をしたものです。

たった1日の人形展、しかも平日!今回の来日では、札幌→広島→東京と3箇所で彼女の人形にであう機会がありそうです。札幌も急遽スケジュールを調整して決定した企画ですが、足を運んでいただれば幸い。そして、すでにアンネさんをご存知、もしくは、アンネさんの人形が手元にある方は、是非、人形と一緒に足を運んでくださいませ(同窓会的な・・・)。お待ちしております。

 

日本語でアンネさんの情報はほとんど見つかりませんので、今回、手元にある資料からまとめてみましたので、ご参照くださいませ。

アンネ・コールシュミット(Anne Kohlschmidt)さんは、ハンブルクから南東へおよそ50km、ニーダーザクセン州の中心都市リューネブルク在住。1942年生まれのアンネさんは今年75歳になります。35年くらい前に今回展示する人形シリーズをつくり始め、これまで世界の数々の人形展で受賞しています。

アンネさんの人形は、堅く編まれたトリコットという厚手の布地でつくられていて、身体には綿と砂が詰められていて程よい重さと安定感があります。シンプルな材料を用いて効果的に引き立てられた自然な魅力。すべてのパーツが手づくりで、頭と顔を一体ずつ仕上げてから、髪の色や洋服のイメージをつくり上げ、自然に名前が付けられます。

 

心の中にひとつひとつの人形の姿が浮かんできます。
そのイメージに形を与えようとするのですが、
私の手がイメージに追いつく事はあまりありません。

 

アンネさんは型やモデルをほとんど使わずに、ひとつひとつ異なった人形をつくります。人形が着る服や靴も、型紙を使わずに一体一体特別な人形にあわせて手で縫いあげます。丈夫なコットンもしくはリネンを使い、淡い色、シンプルなパターン、直線的なカットを用いてつくられるカーディガンは人形に温かみを添えています。

 

ひとつひとつの人形が、私にとって新たな挑戦です。
毎回できるだけ完璧な全体像をつくりあげるよう努力します。
ぴったりと人形に合う色や形を決めるまでに、
何着も何足も服や靴を縫う事もあるんです。

 

 

アンネさんの人形は、さまざまな作品であふれかえっている人形作家の世界で、30年以上にわたり独自性を保ち続けています。彼女の作品の品質の高さは、ドイツのノイシュタット・バイ・コーブルクで毎年開催され、人形遣いのアカデミー賞とも言われるマックス・オスカー・アーノルド賞(Max Oscar Arnold Prize)の審査員も認めるところで、2002年、2009年、2010年に賞を受賞しています。また、アンネさんは毎年2~3回人形展や手工芸品のフェアに出掛け、そこで出会う美しさを愛で、他の人形作家との交流を楽しんでいます。

 

最初から、そして今でも変わらず、
私は自分自身のために人形をつくっています。
私の夢に形を与えることが、
どうしてもやめられないのです。

 

これが、彼女を人形づくりへとかきたてる情熱であり、針と糸から生み出される彼女の人形ひとつひとつが傑作な理由ではないでしょうか。人形が手元を離れるときには、いつも別れ難いそうですが、大人も子どもも関係なく、アンネさんの人形を手にした人が、手元に人形を置き、人形と共に生き、愛し続けることを願っています。

Susumu Fujita

20代から庭とこどもと本にとりつかれ、いまだその間を行ったり来たりしている。学生の時は旅人に憧れながらも、卒業後、土から離れられない農民になり、鶏と豚と野菜の中で過ごす。その後、札幌に戻り、絵本屋になる。庭プレス、ひげ文庫主催。

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