創業者から何を引き継いだのか。創業者は何をしようとしていたのか。

ろばのこにはBrother Sun Sister Moonという姉妹店があります。Brother Sun Sister Moonは「子どもと大人への贈り物専門店」。ろばのこの次の方向性を探るための実験なのでしょう。店主の藤田さんとしては、そんなに難しく考えてやっているわけでもないと思いますが。灰色ビルの2階には、ろばのことBrother Sun Sister moonを掛け合わせたような店が移転してくることになりそうですが、そのことについて藤田さんと話していた時に話題になったのが、さて、移転してくる店の名称は「ろばのこ」なのか? それとも「Brother Sun Sister Moon」なのか? ということ。皆さんならどちらを選びますか?

ろばのこは創業者である藤田さんのお父さん、藤田春義さんが1996年に始めたお店。とても素敵なお店ですが、時代に合わせた調整が必要に見えます。Brother Sun Sister Moonは、息子の藤田進さんが2014年に始めたお店。内装もウェブサイトのデザインも素敵な、新しいタイプのおもちゃ屋であり絵本屋です。お父さんの春義さんのろばのこに対する想い、息子の進さんのBrother Sun Sister Moonに対する想い、社員の方々の想いなど、詳しいことは僕にはわからないので、一旦それらは考えないことにして、感覚だけで判断すると、僕は「ろばのこ」を選びたいとと思いました。

社長をお父さんから息子に引き継ぐ時期なので、おそらく進さんとしては自由に名前を選べるのだと思います。そこで、あえて自分で名前を選ばない、自分で名前をつけるのではなく、そこにすでにある名前でやり続けることに何か意味があるような気がするのです。とお伝えしたら、藤田進さんからこんな風に答えが返ってきました。「(名前を引き継ぐ)意味があるとすれば、それは日本的な師弟関係、“先代を越えられない構図” です。(先代から)何を引き継いだのか?(先代は)何をしようとしていたのか? を自問自答し続ける。それは自分を支える柱になっていくみたいな」。

夕食を食べながら、妻にろばのこがよいか、Brother Sun Sister Moon がよいかと尋ねたら「ろばのこがよい」と迷わずに言っていました。何かを決めるときに妻に相談することはほとんどないのですが、決めた後に妻の意見を聞いてみることにしています。最近は意見が一致することが増えてきた気がします。

Shin Sasaki

デザイナー、D&DEPARTMENT HOKKAIDO のオーナー、一児の父。お酒は飲めません。学生時代にミニシアターで映写技師として働いていたので8mm、16mm、35mmの映写ができるのですが、その技術を活かす機会は20年で1度だけ。