ちょっとひねくれた面白い優等生

福音館書店の月刊絵本ってご存知ですか? この記事を読んでいる方は、知っている方が多いかもしれませんね。1956年の刊行以来、『ぐりとぐら』『はじめてのおつかい』『きんぎょがにげた』などの名作を生み出してきました。月額420円で、こどもの年齢や興味に合わせた新作の絵本を毎月1冊、1年間で12冊受け取ることができます。ものがたり絵本シリーズは3コース。動物や乗り物、ファンタジーや昔話など幅広いテーマで、こどもの想像力や感性を育てる絵本を取り揃えています。かがくの絵本シリーズは2コースから選べ、日々の遊びや暮らしの中のちいさな不思議や疑問を題材にしています。というのが、よくある「こどものとも」の説明なのですが、いまひとつ魅力を伝えきれていない気がするので、私の個人的な話をしてみようと思います。

私は幼い頃「こどものとも」を定期購読していました。当時は素直に楽しんで読んでいたのですが、成人してから月刊絵本の本当の良さに気づきました。テーマも、作家も、画風も1冊ごとに異なるので、すべての絵本がお気に入りというわけではありませんでしたが、大人になってから思い出す絵本って、ほとんど「こどものとも」なんです。月刊絵本に限らず絵本はたくさん読んでいたので、不思議です。

月刊絵本は年齢別にコースが分かれているので、年齢に合った絵本を無理なく読めていたのでしょう。適度な文章の長さと、魅力的な絵や言葉遣いで、絵本の世界に入り込んでいたのだと思います。そして、本当に個人的な印象なのですが、福音館の月刊絵本って、絵本の中の優等生みたいなイメージを持っていました。道徳的なお話が多くて、絵がかわいらしいので、こどもの頃は楽しめるけど、大人になったら物足りないと思っていました。ろばのこで働くようになり、私の心に今も残っている絵本を改めて調べてみたところ、ほとんどが「こどものとも」でした。

『たいこたたきのパチャリントくん』や、『くろいマントのおじさん』、そして『バオバブのきのうえで』など。こどもの頃に感じていた印象は間違えてはいなくて、やはり道徳的な内容なのですが、ちょっと変化球のお話ばかり。大人になって読んでみると、感じることや視点が違うようです。今の月刊絵本に対する印象は「ちょっとひねくれた面白い優等生」ってところです。

こどもの趣味嗜好ってはっきりわかりません。だから親が絵本を選ぶしかないのですが、そうすると知らないうちに偏りが出てきます。毎月届くから思いがけない絵本に出会えるところが月刊絵本のいいところ。そしてその1冊が、こどもの心に一生残る1冊になるかもしれません。私の母はふわふわかわいい絵柄のものが大好きなので、きっとスズキコージさんの『たいこたたきのパチャリントくん』を買うことはなかったと思います。

月刊絵本はすべて新作でソフトカバーの状態で届けられるのですが、その中の一部だけがハードカバーになって出版されます。ハードカバーにならなかった絵本たちは、読むことが難しくなります。私がこどもの頃に読んでいた「こどものとも」も、ほとんどはもう購入できません。先述した3冊の絵本もハードカバーとしては出版されていません。お子さんのお気に入りの一冊が、ハードカバーとして出版されるとは限らないのです。月刊絵本は、お子さんが成長して読まなくなっても保管しておくといいかもしれません。大人になった頃に、あなたが昔読んでいた絵本だよって渡してあげてください。きっとすごく懐かしくて暖かい気持ちになるはずです。

 

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Konomi Horiuchi

庭ビルの中のあちこちに出没します。ある時は2階でおもちゃを売っていたり、ある時は3階で箱を作っていたり。絵本のおもしろさに引き込まれこつこつ集め中。