ポッケに種を、そして街場へ。

ビルの屋上の庭を妄想し始めている。春分も過ぎた。関東ではもう温床での育苗、朝夕の水やりと温度管理が日課になっているころだ。縮こまっていた身体がふんわりと緩んで、温かさと芽吹きの力に、春は大変心地が良い。札幌の春は、冬が長く居座る感じで、夏手前くらいでようやく身体が緩む。まだまだ寒さが残る札幌。風が冷たい。

札幌は、これからようやく種をまいて、連休あたりに定植する苗を育て始める。のんびりと今年の収穫を想像しながら、作付け計画を立てたりするなんとも楽しいひと時。それが終わると、春と夏が一気にやってきて、秋ままならず、冬がいそいそとやってくるものだから、前後にぎゅっと詰まって忙しい。

庭=暮らしのバックヤード。

庭は郊外の森や畑にあるとは限らない。ビルの隙間、街場の空き地、そう、そして、屋上!
屋上の庭師リディアを紹介しよう。リディアは種をまき、育てる女の子。欠けたカップや凹んだケーキ型に、はずれの空き地から土を運んできて、種をまく。土があって種を植えれば、美しい植物や花が顔をだしてくれる。春は新鮮な気持ちで彼らをみれるから、なおさら美しく見える。

春だ春だ!
ポケットに種を!
欠けたカップに土を!
屋上には庭を!

リディアのガーデニング

文=サラ・スチュワート 絵=ディビッド・スモール 訳=福本友美子 アスラン書房
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Susumu Fujita

20代から庭とこどもと本にとりつかれ、いまだその間を行ったり来たりしている。学生の時は旅人に憧れながらも、卒業後、土から離れられない農民になり、鶏と豚と野菜の中で過ごす。その後、札幌に戻り、絵本屋になる。庭プレス、ひげ文庫主催。