近藤紘一さんの「サイゴンから来た妻と娘」を読みました。ベトナム戦争の最末期の5年間をサンケイ新聞の特派員としてサイゴン(現在のホーチミン)で過ごした近藤さんは、1975年4月30日のサイゴン陥落(サイゴン解放)を現地で迎えました。
実はこの本、チェンマイへ旅立つ前に、書店で旅のお供を探しているときに一度手に取りました。もともとタイの本を探していたのですが、良い本が見つからず、妻の勧めもあって、このタイの隣国であるベトナムについて書かれた本を買おうかと考えたわけですが、結局その時は、訪問先とはまったく関係ない「パリ・旅の雑学ノート」を選びました。妻がベトナムに通い始めたのは1996年だと言っていたので、きっとその頃に読んでいたのでしょうね。そう、考えてみると、ベトナムはかつてフランスの植民地でしたね。
著者の近藤紘一さんは24歳で結婚して、27歳から3年間フランスに留学しながら欧州移動特派員を務めました。近藤さんが30歳の時に夫人が自ら命を絶ちます。31歳でサイゴンに赴任し、翌年、表紙になっているベトナム人のブイ・チ・ナウと結婚し、11歳のミーユンの父になります。サイゴン陥落(サイゴン解放)後、近藤一家はサイゴンを離れ、東京で暮らすことに。「サイゴンから来た妻と娘」は日本での3人の暮らしを中心に書かれています。
最初の妻が自ら命を経ったり、戦争の真っ只中のベトナムで暮らしたり、ベトナム人大家族の中に飛び込んだりと、かなりドラマチックな人生ですが、近藤さんの語り口はつねに淡々としています。達観したというか、悲しみが漂っているというか。気のせいかな。近藤紘一さんご存命なのかなと調べてみたところ、1986年に45歳の若さで亡くなられていました。続編として「バンコクの妻と娘」、「パリへ行った妻と娘」が書かれているようで、「パリへ行った娘と妻」が出版されたのは、近藤さんが亡くなった1986年。